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指先が捉えた、ストラディバリウスの残響。

2016年。スペイン、アギラスから50キロほど離れた小さな漁村に、その男はいた。 彼の名はダニエル。ベルギー出身の、世界屈指のギター職人である 。

年間わずか3台。看板すらない彼の工房には、世界中のプロギタリストからの注文が絶えない 。彼が作るギターの音は、「世界一」と称されていた 。

含水率計を持たない、最高精度の観測

伊藤がダニエルの元を訪れた際、ある光景に目を奪われる 。 ダニエルは、現代の木材加工において必須とされる「含水率計」を一切使わないのだ 。

「彼は、板を2本の指先でコツン、コツンと軽く叩くだけで、乾燥の度合いを判別する。自分が最も気に入った響きになった瞬間、はじめて製作に入るんだ」

それは、ストラディバリウスをはじめとする伝説的な楽器職人たちが共有していたであろう、「細胞と対話する」かのような極めて精密な感覚の世界だった。

「奇跡」を、物理学の領域へ。

当時のダニエルの工房にあったのは、電気ヒーター一台の簡素な乾燥室 。しかし、そこで行われていたのは、個人の卓越した感性による「分子レベルの調整」に他ならない。

一人の天才による、年間3台という奇跡。
楽器乾燥の構想は、このスペインの工房で、指先の微かな振動から始まったのです。

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